脳の潜在的なモチベーション
人間は、未来について様々な予測をしながら生きている。脳は予測機能を高めることで、人生の不確実性(=リスク)を減らそうとするとするモチベーションを持っている。
たとえば、心理学や脳科学を学ぶことは、人間に対する理解を促進し、それが人生や人間関係などにおける未来予測の精度を向上させる。
あなたが勉強やスポーツなどの練習をする目的も、おそらくそこではないだろうか。「いろいろな状況をコントロールできるようになりたい」という欲望である。
どうして、そういうモチベーションがあるのかと言えば、それが生存のために有利だったからだ。脳のセキュリティを高めようとする潜在的なモチベーションと言える。
内発的動機付けと外発的動機付け
脳のセキュリティ向上は、自分が有能であるという感覚(=有能性)、人生をコントロールしている感覚(=自律性)、他者との良好な関係(=関係性)といったものと繋がっている。
こういった内なる満足感や充足感を目的としたモチベーションのことを「内発的動機付け」という。
一方で、それと対を為す概念である「外発的動機付け」は、いわばアメとムチのことである。お金などの外的な要因によって人を動かす考え方である。
外発的動機付けは、短期的には効果を発揮することもあるが、長期的にはマイナスの影響も見られるので注意が必要である。
不確実性の揺らぎでモチベーションを維持する
リスクのない人生は安心だが、それと同時にちょっと退屈でもある。
実際、外の世界が怖いからといって、家の中に引きこもっていては生きていけない。だから、リスクを求めるモチベーションが備わったのだろう。
よって、「不確実性を減らすこと」「不確実性を増やすこと」を行ったり来たりする状態(=不確実性の揺らぎ)が、モチベーションにとってベストな状態だということになる。
たとえば、読書をするのは、新しいことを知ろうとすることであり、「不確実性を増やすこと」である。自分の中の既成観念が破壊されて戸惑うこともあり、脳内セキュリティが弱まる。
一方で、本の内容をノートにまとめたり、ブログで書評を書くなどは、「不確実性を減らすこと」である。解釈をまとめたり、考えを明確化することで、脳内セキュリティが強まる。
収束的思考と拡散的思考
「拡散的思考」は不確実性を高め、「収束的思考」は不確実性を低める。
具体的には、以下のようなものが考えられるだろう。
- 拡散的思考:パズル、読書、仮説、ブレインストーミング、遊びetc…
- 収束的思考:暗記、書評、検証、まとめ、仕事、片付けetc…
これらは思考の両輪であり、どちらが優れているというわけではない。
「思いつきだけで行動して、何ひとつ形にならない人」は収束的思考が足りていないし、「新しい挑戦を避けて、人生が小さくまとまっている人」は拡散的思考が足りていない。
あなたは、どちらが得意(あるいは苦手)だろうか。