水原一平のESPNインタビューの「違和感」の答え合わせ

水原一平による発言の違和感

今回の事件の発端となったのは、水原一平がESPNのインタビューで語った内容である。以下、ESPNの記事の一部分の翻訳である。

「明らかに彼(オオタニ)はそのことに満足しておらず、二度とこのようなことをしないように私を助けると言った」と水原は語った。 「彼は私のためにそれを返済することに決めました。

「ショウヘイが賭博にまったく関与していなかったということをみんなに知ってもらいたい。これが違法であるとは知らなかったということを知ってほしい。私は苦労して教訓を学んだ。スポーツ賭博は二度とやりたくない。

(……)

水原は「私は(ギャンブルが)大の苦手。二度とやりたくない。一度も賞金を獲得したことはない」と語った。 「つまり、自分で穴を掘ったのに、その穴はどんどん大きくなり、そこから抜け出すためにはより大きな賭けをしなければならなくなり、負け続けることになったのです。雪だるま式の現象のようなものです。」

引用:https://www.espn.com/mlb/story/_/id/39768770/dodgers-shohei-ohtani-interpreter-fired-theft

この発言の後、水原一平がそれを撤回したことで「もみ消しではないか」「トカゲのしっぽ切り(スケープゴート)ではないか」というひどい憶測が飛び交った。

そういう人には、「あなたなら、妻や自分を危険に晒してまで、トカゲのしっぽを引き受けますか?」と聞いてみたいものだ。

だが一方で、この水原の発言に違和感を持った人もいたはずだ。それは「二度とこのようなことをしないように私を助ける」「一度も賞金を獲得したことはない」「二度とやりたくない」の3箇所である。水原が容疑者となり、大谷選手の潔白が証明されつつあるので、違和感の答え合わせをしてみようと思う。

違和感を覚えた3つのポイントと答え合わせ

「助けるためにこっそり肩代わりする」は論理的に破綻している

「助けるため」と「こっそり肩代わりする」が論理的につながっていない。

こっそり借金を肩代わりすることが、助けになるとは言えない。なぜなら隠すことで、依存症という真の問題の解決は遠ざかるからである。

そもそも依存症は病気であるから、こそこそ隠す必要はない。「隠さなければいけない」というのは、それこそギャンブル依存症の人の思考である。

「一度も勝ったことがないのにギャンブル中毒」なんてあり得るの?

一度も勝ったことがないのに、ギャンブルにハマるというのがおかしい。

いくら負けが込んでいても、一度は勝ったことがあれば「次こそは」と思うのも理解できる。勝ったことがあるからこそ、脳裏に「勝ち」がチラつくのだから。

その答え合わせとなったのが、以下の記事に書かれた内容である。負け分よりの方が多いものの、同じくらいの額の勝ち分を得ていたことがわかる。

違法賭博の借金を返済するため、大谷選手の口座から胴元側に1600万ドル(約24億5千万円)以上を不正に送金したとされる。一方で、ギャンブルによる勝ち分は自身の口座に入金するよう指示していた。
(……)
水原容疑者の賭博による合計賞金は総額1億4225万6769ドル(約218億円)で、負けた金額は1億8293万5206ドル(約280億)。つまり損失額は4067万8436ドル(約62億円)にのぼる。

引用:https://mainichi.jp/articles/20240412/spp/sp0/006/108000c

「ギャンブルはもうしない」という言葉の軽薄さ

依存者の人の「もうやらない」ほど信用できないセリフもない。自分の状態をちゃんと自覚していれば、そんな軽薄なことを口にすることなどできないからだ。

「それならどうして今まで反省しなかったのか」という疑問が出てくる。

この段階で、水原一平の発言が信用に値しないと判断した。そして、その答え合わせが以下の記事の内容である。

水原容疑者は、同年12月9日にも限度額の押し上げを要求。「米国に戻って返済するまでに、母に誓ってこれが最後だから。連絡し続けてごめん……」と送信していた。さらに、翌年の6月22日から24日まで3日連続で限度額の押し上げを要求。「これがしばらくの間で最後になるはず」「最後だと約束する」「最後の最後の最後の限度額押し上げできない? 本当に最後だから」と懇願していたことが明かされた。

引用:https://the-ans.jp/news/409175/

信用できない人の発言は、何も喋っていないのと同じ

「ギャンブル中毒者は平気で嘘をつく」「どうして清廉潔白に見えるスーパースターではなく、ギャンブル中毒者の言うことに耳を傾けているのか」ということを指摘している人もいたが、かなりの少数派だった。

その人が信用できるかどうかの判断基準は、言動の節々に現れている。今回、水原一平の最初の発言は、すべてないものとして扱うべきであった。「大谷選手が喋った内容」や「大谷選手が問題なく試合に出場し続けられているという事実」だけを見れば、事実は一目瞭然だったはずだ。

信用できない人を見抜いて、関わらないようにすることは、被害を防ぐ上で重要である。

ステレオタイプ(固定観念)に注意

「あの素晴らしい男が、ダメな自分を助けてくれたんだ」という美談は耳に心地良い。大谷選手のニュースは美談として語られることが多く、一番近くにいた水原一平がそれを利用しようと考えるのは容易い。

この、ステレオタイプで煙に巻くというのは、典型的な嘘のつき方である。人間は、論理的に正しいことではなく、理解しやすいもの(処理流暢性が高いという)を信じるからだ。

今回そのことがよくわかった。「大谷は優しいから肩代わりしてもおかしくない」というステレオタイプを条件反射的に信じてしまった人が多かったからである。

有名人だからといって信用できない

わざと水原一平の発言に乗っかることで、大谷選手の評判を落とそうと思っていた人もいた。途中まで、そういう人間の思い通りの展開になっていた。

そして何より、実業家やインフルエンサーが(結果的にではあるが)これを先導したことに驚愕した。以下、代表的なインフルエンサーであるひろゆき氏のX(旧Twitter)を引用する。

「アメリカではもっと批判が多いから、日本人も大谷を批判しろ」的なわけのわからないことを言う日本人までいた。おそらく潔白であろうと考えられる人間を、どうして批判する必要があるというのか。

そもそも専門機関が捜査しているのだから、一般人が憶測を垂れ流す必要なんてないはずだが。

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