三日坊主と「感情のメカニズム」
モチベーションは決意したときがピーク
まずは、三日坊主のメカニズムを知ろう。
モチベーションが長くは続かないことを、多くの人が体感的に知っているだろう。そもそも、モチベーションとは、目新しさに起因する精神的な刺激のことである。
そして、時の経過にともなって、モチベーション(=刺激の目新しさ)が減少していくのに対して、退屈感(=刺激への慣れ)が増加してくる。
モチベーションが退屈感より高いうちは、行動を続けることができる。しかし、それが逆転すると、退屈とモチベーションの差として、苦痛が現れてくる。
いわば、モチベーションと退屈感のグラフの交点が均衡点である。そこを境に苦痛が生じ、行動を持続させるのが困難になる。それが三日坊主だ。
感情の刺激が薄れていくのは、人間として正常なこと
三日坊主になりがちな人は、根性で解決しようとする。「このモチベーションを根性で維持してやろう」という考え方だ。
しかし、すぐに頓挫するだろう。なぜなら、感情の刺激が薄れるのは、人間として正常なことだからだ。
例えば、大切な人を失って、どんなに悲しかったとしても、数日〜数週間もすれば、感情は落ち着いてくるはずだ。
「この悲しみは絶対に忘れないようにしよう」と決意しても無駄だ。数ヶ月〜数年もすれば、当時の悲しみを、完全に追体験することはできなくなる。思い出して涙が流れることはあっても、人生が終わったかのような、何日にもわたる持続的な気分の落ち込みは再現できない。
なぜ感情が薄れるのかと言えば、同じ感情を引きずっていたら、まともに生きていけないからである。
イレギュラーが習慣を破壊する
何か新しいことを始めるときは、いつも決まって、暇なときである。暇がなければ、新しいことを考える余裕がなくなるとも言える。
そして、日常にはイレギュラーな出来事が潜んでいる。仕事が忙しくなったりとか、人間関係でストレスがあったりとか、病気になってしまったりとか。
例えば、一人暮らしを始めたばかりの大学生が、自炊をしようと考えたとする。
最初のうちは頑張ってこなそうとするが、授業や課題、サークル活動、アルバイトなどが忙しくなると、それどころではなくなる。
その結果として、外食や、スーパーの惣菜、コンビニ弁当、カップラーメンなど、安易な方向に流れていくのである。
それでは、どうすればいいのか?
思いつきや流行に飛びつかない
思いつきや流行にすぐに飛びついてしまって、いつも失敗する人は注意しよう。
例えば、ダイエットのための体操とか、ストレッチとかが流行ったりすることがある。流行は廃れて、どんどん新しいものが生み出される。そのたびに飛びついては、飽きて辞めてを繰り返している人が周りにいないだろうか。
奇妙な体操をするより、ウォーキング(散歩)や、スクワットや腕立て伏せなど、シンプルで馴染みのある筋トレをした方が続きやすい。知らない動きを新しく覚えるよりも、知っている動きを組み合わせた方がハードルが低いのは、当たり前のことだ。
モチベーションのメカニズムを思い出そう。奇抜で目新しいことをしたからといって、続けられるわけではない。流行は飽きられ、廃れるのが世の常である。そこで新しいものを出して、人のモチベーションを煽って、焚き付けるのが、ビジネスのやり方だ。
サステナブルな習慣
「何を習慣にするか」という時点で、すでに勝敗が決まっていることが多い。しっかり吟味して、持続可能(=サステナブル)なことだけをするのが大切だ。
例えば、ランニングはサステナブルな習慣ではない。
その理由の一つは、天候に影響されることだ。雨が降っているときに、傘をさせば、ウォーキングはできるが、ランニングはできない。
また、走っているところを他人に見られるのも恥ずかしい。こういう心理的な障壁は無視できない。強がって、見切り発車をするのは良くない。
強度が高い運動だから、続けるのがしんどいというのも最初に知っておくべきだ。
ウォーキングなら、散歩とか通勤・通学で、自然に生活に取り入れられる。
他にも、家でできる運動なら続けやすい。筋トレ器具を購入しても良い。好きなときに、無理なく、気軽に続けられることが大切だ。
コツコツやらない
コツコツやるとは、体のいい先延ばしである。人間は未来の自分に期待しすぎている。
モチベーションがなくなる前に、一気に結果を出すことを考えるべきである。
例えば、英単語学習を考えてみよう。
毎日少しずつ単語を覚えるのは、オススメできない。通学の電車移動中にコツコツ覚えるようなやり方が典型的である。
このやり方の欠点は、すぐに結果が出ないからモチベーションが下がってしまうところである。モチベーションのメカニズムを思い出して欲しい。何もしなければ、モチベーションは下がるようにできているのだ。
覚悟を決めて、1日で1000単語くらいガッと覚えてしまう方がいい。結果が出れば、モチベーションは回復する。
if-thenプランニング
「○○したら△△する」と決めておく方法は、if-thenプランニングといって、心理学のテクニックだ。
スケジュールを立てるときに、すでに習慣化されているものと隣り合わせにして、新しく習慣化したい行動を配置するのである。
例えば、朝起きるのが苦手で、二度寝をしないための仕組みを考えたことがある。
ベッドの近くに歯ブラシと歯磨き粉を置いて、目が覚めたら布団の中で10分くらいかけて歯を磨くようにしたのだ。
まだ眠くて起き上がりたくないからとりあえず歯を磨く。だんだん目が覚めてくるし、口をゆすがないといけないから、洗面所に行くことになる。
「目が覚める」「起き上がる」という行動の間に、「歯を磨く」という習慣を挟み込むで、二度寝を防ぐことができたのである。
最終的には、三日坊主を繰り返していくしかない
どんな対策をしたところで、めんどくさいものはめんどくさい。
だからこそ、何度挫折しても、やる気が出てきたときにはまた再挑戦することを繰り返していくしかない。
そのうち、結果が出てくれば楽しくなる。あるいは、何かアイデアが思いついて、習慣化のきっかけになることもある。
三日坊主も悪いことではない。